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[海外] 参考書籍 旅とグルメ(海外編)

[本] イタリア語通訳の第一人者、田丸公美子さんから学ぶイタリア

大好きなイタリア語を専門とする日本の翻訳家・通訳・エッセイスト、田丸公美子さんの読んだ本まとめてます!複数出版されていますが、どれを読んでもはずれはないと思える面白さです。

パーネ・アモーレ

イタリア資本の会社のお仕事を少し頂いたという事もあり、
イタリア人気質などを勉強しようかなと本を手に取った。

イタリア語通訳界の大横綱と言われるシモネッタ・ドジ(故・米原氏の命名)こと田丸公美子さんの著書。
他と同じ事を嫌うイタリア人の性格から、
温室育ちのカモネギ旅行者の日本人、
イタリア人の発するユーモア溢れる下ネタとジョーク、
喜んでと誘いに応じたくなる様な口説き文句まで満載の面白エッセイ。

イタリアではママは聖母信仰にも似た永遠の愛の対象で、
ママも娘より息子を溺愛する傾向にあるそうだ。

来日中に通訳を務めたイタリア人達に、
「イタリアに来たら絶対案内するよ」と言われていたので、
訪れた際にせっかくなのでと声をかけたら、
「その日はママとの予定が~」と何度もお断りされた事があるそう。

二十過ぎの男の子の爪が伸びていたので、
「危ないから切りなさいよ」と言ったら、
平然と「ママが今旅行中だから切ってくれる人がいないんだ」
と真顔で答えたそうな。

そこを読んでいて、大学時代、ロシアへの語学留学中に見た光景が蘇った。

学生寮の寮長さんがとても恰幅のいい縦に短く横に広い、典型的なマトリョーシカ体型で、
愛情に溢れ、明るく気さくでチャーミングで怒るとちょっと怖いおばあちゃまだったのだが、
(私はこの寮長さんが大大大好きだった)
180センチ近くあるなかなか好青年な息子が週1~2回仕事が終わるとママ(寮長)の所に会いにやってきていた。

彼はママを見つけると、30年ぶりに再会した様な勢いで長い廊下を駆けていき、
ママにしっかり抱きつきキスを何度もした。

そこまではドラマチックで心にじーんと響く再会シーンを見ている様(でも毎週)。

このドラマには続きがあって、彼はママをそのままはがい締めにして、
おっぱいのあたりに頬をギュウギュウ埋めて、最後にはおんぶをして歩けと強要し始めた。
ママもまたそれに応えて息子をひきずりながら廊下を行ったりきたりしていた。

その頃は、見た目は紳士に育ったけど、頭の弱い青年なんだと勝手に解釈をして、
少なからずママのこれまでの大変さを想像しながら同情していた。

後で気がついてみたら、私の世界が狭かっただけで、
それは、あちらの世界では普通の事だった。

話を戻して、その田丸さん、
イタリアでたまたま乗ったタクシーの初老の運転手が
「うちの妻は全然甘えさせてくれなくて、
僕は幼い頃にママを亡くしているから母性愛に飢えているのに僕の気持ちを全然理解してくれない」
と切々と訴えるのを聞いて、
「かわいそうに、ママはいくつの時に亡くなったの?」
と聞いたら、
僕が21歳の時に
という返事が返ってきたそうな。

日本にいると、「マザコン」と表現され、呆れられる所かもしれないけど、
島国から出て外側を眺めてみたらそれがひとつの日常だったりする。

夫に国が変わればこんなにマザコンが多いのに日本ではなぜそうならなかったのだろう?と尋ねたら、「冬彦さんでしょ、あれの影響大では?」と。今の40代ぐらいへの影響は大きそう。

イタリア語通訳奮闘記 パーネ・アモーレ (文春文庫) [ 田丸 公美子 ]
イタリア語通訳奮闘記 パーネ・アモーレ (文春文庫)

シモネッタの男と女

本は6つのエッセイで構成されており、いつもの様に下ネタ話を交えて一つ一つ楽しく纏められている。

まず、田丸公美子さんのエッセイによく名前の出てくる大親友のイタリア人クララさんとの出会いについて知る事が出来たのが良かった。
彼女の醸し出す雰囲気や可愛らしさを知る事が出来、
今後は彼女の空想を膨らませながら楽しく読む事が出来る様になった。

そして、最後のしめとなる章に「米原万里」が出てきてやられた。

彼女の親友(彼女は万里の下僕であり従者であり太鼓持ちであったと書いているが)との思い出、
故米原万里さんの毒舌と楽しい会話のキャッチボールから死に際のベッドで交わした言葉まで、
彼女の溢れ出る思いが綴られている。

米原万里好きにはたまらない内容。

友達に米原さんの血液型を聞かれて、メールで尋ねてみたら、

「あなたの友人が私の血液型を知りたがっているようですが、
私は、人類をわずか四つに分類して考えるような馬鹿とは、絶対に友達になりません。
ちなみに私はO型です。」

わらえる。私を含め世の中の血液型別性格診断好きには厳しい一言。

米原さんが書く田丸さん、田丸さんが書く米原さん、本当にユーモアたっぷりでいつも楽しく読んでいるのだが、
今回の話は何度も目がウルウルとなった。

シモネッタの男と女 イタリア式恋愛力

イタリア的恋愛のススメ シモネッタのデカメロン

学生の必須読書にしておいたらよし!? 

イタリア男は華麗なる口説きテクニックの総合商社といったところでしょうか。男性の方々が読んだら口説きの引き出しが増えて元気になるかも。笑。

一例として、「女にもてる最大の秘訣はマメであること」初回はあっさり別れて安心させる。花を贈り喜ばせる。少し傷ついたふりをして負い目を負わせる。興味をひきそうな文化的企画に誘う。

シモネッタのデカメロン イタリア的恋愛のススメ (文春文庫)
シモネッタのデカメロン イタリア的恋愛のススメ【電子書籍】[ 田丸公美子 ]

イタリア語通訳狂想曲 シモネッタのアマルコルド 

田丸さんが通訳人生40年を振り返り、日本、イタリア、言葉の粋について綴る人気のエッセイであり、NKHの語学テキストのコラムへ掲載されていたものが纏められた本。という事で、ミシュラン級の上質な下ネタは抑制されども豊富な経験談からの内容はあつい。

いつでも、どこでも、誰とでも」これがイタリア人の下ネタ三原則。

人は見た目、モノはデザインが大切。イタリアのブランド品ってとにかくお洒落と思うけれども、質でも機能でもなくデザインが重視される。他の著者が書いたイタリアエッセイにも似たような事が書かれており、イタリアでは直感的審美眼が尊重され、重要視される。合理的かなんてどうでもよくてとにかく好きか嫌いか、常に人々は直感を磨いているそんな国。

イタリアには精神病患者がいない、何故なら全員が精神病みたいなものだから、という話が出てくる。イタリア文化を知っておくと理不尽さにあってもイタリアかと思えば意外とスッキリします。

イタリア語通訳狂想曲 シモネッタのアマルコルド (文春文庫)
イタリア語通訳狂想曲 シモネッタのアマルコルド (文春文庫) [ 田丸 公美子 ]

シモネッタのドラゴン姥桜

人生で初めてイタリアという国に大いに興味をもたせてくれた伊語通訳として有名な田丸公美子さんの、子育て?本。

運動会はちょこっと見に行くだけ、卒業式も行かない、海外出張は頻繁と放置プレイ状態
自己犠牲を極力おさえての子育てで開成、東大、弁護士へと進ませる指南書。

基本の言語である「日本語」が重要だと伝えています。

1.1歳からイタリア語や日本語で読み聞かせをする
2.日常会話の中に常にことわざ、熟語、古典文学、詩の引用などをまぜ知識を伝授
3.寝る前の読み聞かせは読み聞かせた後に、その物語を語らせて覚えて纏めて話す能力を鍛える
4.しりとり、ことわざ、熟語などゲームをしながら身につけさせる
5.しっかりとした母国語を覚えさせる

日本語がどれほど重要かを改めて考えさせられた。
頭の良い子供に育てたければ、まずは、親の日本語をなんとかすべき、だそう。

いまでも日本語は私にとって悩みのつきない言葉なのでささりまくり。

控えめな母親が日本の社会に溶けこみやすい様にと、
人の顔色を伺い、表の言葉と裏の言葉をよく読む様に、
十人十色、思った事を口に出さない日本人の裏の言葉を想像せよと私を育てた。
その結果、私の国語の成績は落ちこぼれ、欠陥ツールとなった。今思えば創造でしかなかった。

国語偏差値の高い夫に「国語の成績どうだった?」と聞いた所、
「え?国語って一番簡単じゃない??」って聞かれてしまった。涙。

シモネッタのドラゴン姥桜 (文春文庫)